顧客を中心にコンタクトセンターからDXを実現
更新日:2022年7月14日
顧客1人ひとりの声に耳を傾けるコールセンターにおいて、コールリーズンの分析は欠かせない作業の1つです。コールリーズンを分析し、次の改善に活かすことで顧客の声を反映したコールセンターを作ることができます。今回はコールリーズンを分析する重要性や、分析後に実施できる改善例についてご紹介します。
1.1. VOCの分析
1.2. 優先順位の決定
1.3. セルフサービスの検討
1.4. スキルセットの見直し
1.5. 異常値の検出
3.1. IVRの最適化
3.2. トークフロー・トークスクリプトの刷新
3.3. ロールプレイングの実施
3.4. セルフサービスへの移行
3.5. 異常値から見るその他の対策
コールリーズンとは、顧客が問い合わせしてきた際の理由を指す言葉で、問い合わせ内容をカテゴライズするために分析が行われます。顧客1人ひとりの課題に同じものはなく、1人ひとりの状況を聞き取って最適な対応を行う姿勢がコールセンターには必要ですが、すべてそのように対応することは非効率的です。ある程度似たような状況をカテゴライズし、いくつかのコールリーズンに分けることで効率よく全体的な応対品質を上げることにつながります。
では、コールリーズンを分析することで具体的にどのようなことが可能になるでしょうか。
コールセンターにおいてはVOC(Voice Of Customer:顧客の声)を分析することが重要ですが、その前段階として必要なのがコールリーズンの分析です。顧客がどんな理由で問い合わせしてきたのかを把握することで、具体的に何を求めているのか、どう対応すれば満足してもらえるのかの道筋を立てることができます。
コールセンターではすべての問い合わせに完璧に対応することが理想ですが、そう上手くはいきません。そこで、コールリーズンを分析することで対策を行うための優先順位をつけ、効率的に問題を解決していきます。たとえば、コールリーズン分析により最も多いコールリーズンが分かれば、そのコールリーズンを優先的に新人トレーニングに組み込み、いち早く対応内容を覚えてもらうといったことができます。また、イレギュラーなコールリーズンはすべてのオペレーターが対応できるわけではありませんが、そういった内容にも対応できるベテランオペレーターやSVに素早くつなぐといった対策もできるようになります。
コールリーズンをいくつかに分けてカテゴライズすることは、そのコールリーズンに潜む重要なポイントを洗い出すためにも有効です。そうしてコールリーズンを分析すると、実はオペレーターの手を借りなくともセルフサービスで解決できる内容である可能性も出てきます。現在はコールセンターも電話だけでなくメールやチャット対応が増加してきており、人の手を借りずに自分で解決できることが求められている時代です。セルフサービスを充実させることは、そのコールリーズンの顧客の満足度を高めることにつながります。
コールリーズンを分析すると、対応するオペレーターのスキルと上手く噛み合っていないと分かることがあります。このようにコールリーズンとスキルセットが合っていないと、オペレーターが問い合わせ内容を調べたり別の担当に代わったりするための保留時間が発生し、応対時間の増加、一次解決率の低下、顧客満足度の低下につながる可能性があります。噛み合っていないと分かれば、スキルセットを見直し、トレーニング内容やオペレーターの配置を変えるといった対策が可能になります。
コールリーズンを分析しておくことで、コールリーズンごとのAHT(Average Handling Time:平均処理時間)を記録できるようになります。AHTをコールリーズンごとに分けておくと、普段より明らかに時間がかかっているコールがあったとき、素早く原因を突き止めることが可能です。
コールリーズン分析を行う際に、優先順位の決定に役立つのが「パレート図」です。パレート図は、頻度や数が多い順に左から並べた棒グラフと、それぞれの割合をどんどん足していった折れ線グラフから成り立ちます。パレート図については、コラム「第17回:パレート図を活用してコールセンターの対応能力を高める」にも紹介しています。
パレート図を作成するには、まずコールリーズンを分析し、多い順に並べて棒グラフにします。次に、コールリーズンの多い順から割合を足していき、最後は100%になるような表を作って折れ線グラフにします。たとえば、1位のコールリーズンの割合が40%なら40%、2位のコールリーズンの割合が20%なら足して60%、3位のコールリーズンの割合が15%なら足して75%というように増えていき、最後まで足すと100%になります。こうして作ったパレート図は、棒グラフが右肩下がりに、折れ線グラフが右肩上がりになっています。
この図を見て分かることは、上位いくつかのコールリーズンだけでほとんどのコール数を占めていることが分かります。つまり、この80%を占めるいくつかのコールリーズンこそ、コールセンターが最優先で取り組むべき課題ということです。(パレート図はExcel等で簡単に作成できるようになっています)
一般的には上位20%の要素が全体の80%を占めるという法則を「パレートの法則」と呼びます。パレートの法則は経済学者のパレートが提唱したものです。
コールリーズンを分析したら、必要な施策につなげていきます。代表的な改善方法のうち、5つを以下にご紹介します。
IVR(Interactive Voice Response:自動音声応答)の最適化は、コールリーズンの分析後真っ先に取り組むべき施策だと言えます。顧客に問い合わせの目的を尋ねてボタンをプッシュしてもらうIVRは、まさにコールリーズンをそのまま反映したものです。一度設定したIVRは、しばらく経って商品・サービスの内容や社会の状況が変わることでコールリーズンにそぐわないものになっている可能性があります。適切なオペレーターにつなぐためにIVRの選択肢を廃止・統合・新規追加することで、一次解決率や顧客満足度の向上につながります。
コールリーズンを分析してみると、以前と比べて顧客が何に困っているかが変化していることがあります。このような差異が判明した際には、トークフローやトークスクリプトを刷新する必要があります。現状のコールリーズンに合わせたトークフロー、トークスクリプトを運用することで、新人オペレーターが対応する際にも迷うことが少なくなります。
コールリーズンを分析すると、顧客の課題を最短で解決したコール、保留時間が多く時間を要したコール、最終的に解決しなかったコールなどが分かってきます。そういった良い例や悪い例を叩き台にすることで、現状のコールリーズンに合ったロールプレイングを行うことが可能になります。
分析によりオペレーターなしで解決できるコールリーズンが判明したら、実際にセルフサービスへの移行を進めます。セルフサービスの具体的な方法としては、Webサイトに分かりやすいFAQを載せる、チャットボットで適切な回答を用意する、IVRですべての対応を完結させるなどがあります。
コールリーズンごとにAHT(平均処理時間)を記録しておくと、普段はどのオペレーターも問題ないのに不意に時間がかかりすぎているコールを発見しやすくなります。現場を監督するSVはできればすべてのコールをリアルタイムでモニタリングしたいところですが、CRMシステムのサポートがあってもなかなか難しいものです。コールリーズンごとに分けておけば注意してモニタリングすべきコールを判断しやすくなるので、異常があったときの素早い対処が可能になります。
顧客が何を求めてコールセンターに問い合わせているかを素早く把握するには、コールリーズンを分析することが有効な手段です。ただし、実際には1人ひとりそれぞれの状況があり、カテゴライズしたコールリーズンだけを見てしまうと本質を見逃してしまうこともあります。オペレーターは1人ひとりのVOCに向き合うという原則を忘れずに、コールリーズンを素早く把握しつつ、顧客に合わせた対応を選択することが大切です。