CX向上を実現するコンタクトセンター向けCRMソリューション
コールセンターにおいては電話対応が最も重要な業務であることに違いはありませんが、センターによってはメール対応もまた重要な業務です。インターネット人口の拡大やスマートフォンの普及により、メール対応の重要度は増してきています。しかし、メール対応においては業務改善が難しいという現実もあり、電話対応ほど高いレベルの改善が行えていないコールセンターも多いのではないでしょうか。
ここでは、メール対応の基本的なところから具体的なテクニックについてご紹介します。
CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)の拠点たるコールセンターでは、生産性や顧客満足度を上げるため、電話対応の改善が日々行われます。メール対応もまたCRMにおいて重要度を増している現在では、メール対応の改善も行っていく必要があります。
メール対応をよくしていくための基本的なことは、返信内容のテンプレート化とその見直しです。メールのテンプレート化は、電話対応におけるトークスクリプトと同じだと考えることができます。
ただ、多くのコールセンターではすでにメールのテンプレート化は行っているものと思われます。メール対応の業務を開始するなら、テンプレート化はほぼ必須です。しかし、テンプレート化がきちんとうまくいっていないケースは多々見受けられます。
具体的には、「特に問題なく対応ができている」と感じているケースです。問題なく対応できている程度であれば、その陰に隠れている大きなリスクを見逃している可能性があります。
想定すべきは、黙って去ってゆくサイレントカスタマーの存在です。CRMにおいては、そもそも直接声を届けることのないサイレントカスタマーが多くいることが知られています。メール対応においてはそれに加え、メールの返信にガッカリして去ってしまうサイレントカスタマーも多くいます。電話であればその場の会話の様子から気づくかもしれませんし、後日通話録音の内容から相手の反応を知ることができます。ですがメール対応に不備があったとしても、返信がなければ相手の反応がわかりませんからすぐに不満な様子が分かる電話と違ってそれに気づくことが難しいのです。
そういった静かな離反をできるだけ防ぐには、オペレーターごとの差をできるだけなくしていく対策が必要です。テンプレート化をしてもそれがうまく浸透しているかは別なので、しっかりとチェックする必要があります。
では、実際にはどのくらいの差が出てしまうのでしょうか。
たとえば、ある商品についての問い合わせがあったとします。あるオペレーターは、Webサイトに掲載されてある商品の詳細とページのURLを貼りつけただけの返信をしました。しかし同じような問い合わせでも、別のオペレーターは自分の言葉で商品のことを説明しただけでなく、お客さまからいただいた意見までも紹介したのです。このような差は、同じコールセンター内でも十分に起きうるものです。
内容の差だけでなく、レイアウトの差が出ることもあります。分かりやすいのは、改行の数です。あるオペレーターが適宜改行し、項目ごとにカラの行を入れるなどの工夫をしていても、別のオペレーターは改行のない文面を送るというケースがあります。漢字とひらがなの使い分けについても、差が出やすいポイントです。
オペレーターごとの差をなくすことは極めて困難ですが、上記のような大きな差は望ましくありません。電話による相談にて顧客はオペレーターを企業の人間だとみなすように、メールの問い合わせに関しても返された文面がその企業の応対品質だと捉えます。テンプレ化が不十分だと顧客満足度は低下し、CRMとしてよくない方向に傾いてしまうことになります。
一部のコールセンターにおいては、メールで返信をする際に必ずスーパーバイザーなどの責任者が承認してから送信する運用をとっているようですが、これらの差はコールセンター内で精査をする以外に、ミステリーメールを依頼することでも調べることができます。ミステリーメールとはミステリーコールのメール版で、顧客を装って問い合わせを送ってみることでそのコールセンターのメール対応の実態を探るというものです。これらの調査を行うなどして実態を常に把握し、適宜メール対応の改善を行っていくことが大切です。
ただ、「テンプレート化のしすぎ」にも注意する必要があります。電話対応にてトークスクリプトを意識させすぎると非常に淡泊な応対になってしまうのと同じように、極端にテンプレート化してしまうと人間味のない機械的な返信となってしまいます。CRMの現場においては、顧客一人ひとりに合わせて柔軟な応対をすることも大切です。電話対応と同じように、オペレーターごとの均一化を図りつつ、柔軟な応対を身につけられる研修などを行うことがメール対応の品質改善につながります。
上記のとおりテンプレート化はとても大切ですが、メール返信の中身を改善していくことも同じく大切です。これはオペレーター個々人が取り組んでもいいものですが、全体の品質を上げることがコールセンターにとっては必要なので、センターが率先して改善を行っていくのが理想といえます。
ここでは、いくつかあるメールテクニックのうち、重要な3つについてご紹介します。
1つ目は、“MECE”の考え方をメールに応用することです。
MECEとは、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字を取ったもので、日本語では「被りなく、漏れなく」と訳すことができます。つまり、同じことを無用に繰り返さず、必要なものを省いてはいけないということです。MECEはロジカルシンキングの基本とされ、ビジネスを中心にさまざまなシーンで活用されています。
これを、メール返信に適用します。具体的には、顧客が求めている回答をひとつも漏らさず、重複なく返すということです。
メールフォームにはある程度のテンプレートがあっても、自由記入欄の書き方は顧客によって千差万別です。そのため、一通一通ごとに文面をしっかりと読み取り、回答を出すべき項目を逃さないようにする必要があります。
気をつけるべきは、返信内容をテンプレ化しているがゆえにMECEを満たすことができないというケースです。返信はテンプレ化していても顧客からの問い合わせは千差万別なわけですから、すべての問い合わせにテンプレートどおりで対応できるということはありません。業務として何十通、何百通ものメールを見ているとテンプレートに引っ張られそうになりますが、顧客からの問いにきちんと答えられているか、無用な繰り返しをしていないか、きちんと確認することが大切です。
2つ目は、問い合わせの行間を読むテクニックです。
「行間を読む」というフレーズは、いろいろなシーンで聞かれます。しかし行間を読むというのはとても曖昧で、具体的にどうするのかというのは想像が難しいかもしれません。
コールセンターのメール対応においては、「顧客は本当のニーズを書いていないかもしれない」と常に疑うことが重要といえます。
顧客の多くは何度も問い合わせのメールを出しているのではなく、また日本語を自在に操るプロというわけでもありません。そのため言いたいことをうまく表現できていないことがあり、自分が何について困っているかもきちんと把握していない可能性もあります。
そういった問い合わせに機械的に返信してしまうと、当然顧客は求めていた回答が得られません。顧客の求めているゴールを文面から読み取り、それをきちんと後押しできるような返信にすることが大切です。場合によっては、こういうことではないか?という質問のメールを投げかけることも必要です。何度もメールをやり取りすることなく、一度のメールで求められた回答を返すが理想ですが、的外れな回答で終わってしまうより質問するほうがベターなケースもあり得るのではないか、と考えてみることは必要でしょう。
3つ目は、文章テクニックです。
顧客の多くが日本語を扱うプロでないのなら、オペレーターの多くもまた同じ。顧客へ伝えたい回答をうまく表現できないことがあるため、メール対応を業務とするコールセンターであれば文章の研修をすることに大きな意義があります。
数多くある文章テクニックのうち、ここでは“一文一義”についてご紹介します。
一文一義は、簡単にいえば「一文に込める意味はひとつのみに限定する」というテクニックです。日本語は、一度も句点「。」で区切ることなく何文字でも何行でも書き続けることができます。しかしそれでは文の意味を理解しづらく、顧客に言いたいことが伝わりづらくなります。また、書く側も書きながら方向性がズレてしまう可能性が高く、まったく意味の通らない文になってしまうこともあります。
一文一義を意識するだけでも、メールの伝わりやすさは格段に上がるはずです。
顧客とよい関係を築いていくためのCRMにおいて、メール対応は重要度を増してきています。顧客としてはメールでの問い合わせは時間を選ぶことがなく、気軽に送れるという点で非常に有用です。メール対応を行っているコールセンターは、ぜひ上記をご参考ください。