コンタクトセンター向けクラウドCRM enjoy.CRMⅢ

顧客を中心にコンタクトセンターからDXを実現

コンタクトセンター運営のポイント 第62回:コールセンターの負担を最適化すると顧客体験の価値も上がる

その62:良質な顧客体験と効率化を同時に進めるためには

良質な顧客体験を生み出すことがCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)において重要ですが、コールセンターにおいては同時に業務の効率化を進めなければならない側面もあります。コストをかけてばかりでは、いくら高い顧客満足度を実現してもビジネスとして立ち行かないためです。ときには投資としてコストをかけることも必要ですが、良質な顧客体験と効率化を同時に進められる施策もあります。ここでは、そのような施策を進めるためのヒントをご紹介します。

顧客体験に替えられるコールセンターの負担はあるか

顧客満足度の向上を目指すCRMにおいて、満足度を上げるためには「サービス提供側が何かをする」ことのみが正解ではありません。ときには、提供側がしていたことを顧客に任せることで顧客満足度が上げられるケースもあります。その大きな潮流ともいえるのが、セルフサービスです。

お店に行って自分で商品を選び、買物かごに入れるというショッピングスタイルが登場したのは実はそれほど昔のことではなく、1916年のアメリカでのことです。このセルフサービスが大当たりし、スーパーマーケットなどのお店では買物かごを使ったスタイルが爆発的に広まりました。このスタイルが当たり前になった現在では「すべて店員に伝えて取ってもらう」というのが奇妙にさえ思えますが、当時は画期的な顧客体験だったことが想像できます。

日本においても、お好み焼きなど顧客が自分で作る店もあり、これも自分で作る楽しさを顧客体験として提供しているといえます。

セルフサービスへの関心の高まりとITの発展により、セルフサービスはいろいろなところで導入されています。ITの関わらない部分ではセルフガソリンスタンドやレストランのドリンクバーなどが、ITの発達により実現したのはセルフレジや飛行機・ホテルなどのネット予約などがセルフサービスの代表例です。このようなセルフサービスは提供側の負担を軽減しつつ、顧客体験の質を高めたものだといえます。またコールセンターに係わる部分でいえばFAQの公開もセルフサービスの一例といえます。通話を好まない若者が増えているという話もあり、自力で検索することで、顧客が電話するという負担を省くことが可能になります。

このように、サービス提供側で担当していた部分をあえて顧客の担当にしてしまうことがよい方向に働くケースは多くあります。コールセンターサービスを見直したとき、そういった部分があれば積極的に仕組みの変更を検討してみましょう。
ただし、本当にその見直しがよい顧客体験につながるのかは、よく精査する必要があります。

たとえば、先にあげたセルフレジについては便利になった一方で顧客に新たな負担を強いた側面もありました。セルフレジは店員のレジサービスよりも早く精算が終わるというメリットがあり、「バーコードをスキャンするのが楽しい」という体験を提供できる側面もあります。しかし、何か不具合や分からないことがあれば店員を呼ぶ必要があり、お店によってはかえってセルフレジのほうが混むということもありました。この課題については、バーコードのスキャンは店員が担当して精算部分だけセルフで行うセルフ精算レジの登場で大きく改善されています。

コールセンターにおいては、どのような見直しがあげられるでしょうか。
たとえば、電話番号を複数用意するというものがあります。一昔前までは電話回線の技術面の都合から電話番号は基本的にひとつしか持てず、その番号にかけてもらってから担当へ取り次いだりIVR(Interactive Voice Response:自動音声応答)で担当へつないだりといった方法が取られていました。現在までこの方法は続いていますが、顧客は取り次ぎが発生してすぐに担当へつながらないことを嫌い、たらい回しが起きないためのIVRすら好ましくは思わないことが分かっています。この課題を解決するために、電話番号の複数持ちは有効です。

電話番号が複数あると、まず顧客は「どの番号にかけるか」を選ぶ必要がありますが、一方で「自分で適切な担当者へかけられる」というメリットが生まれます。また、その製品の問い合わせ番号はその製品に関連する部分にしか記載されないはずなので、そもそも選ばずに適切な担当へつながるというメリットにつなげられることもあります。

電話番号を増やすとコールセンター側のコストではありますが、現在は導入障壁がかなり低くなっています。電話番号が複数あることで顧客の迷いが少なくなる、オペレーター側も名乗りを限定できるなどのメリットも生まれるので、導入を検討すべき施策だといえるのです。

改善できる顧客接点はあるか

コールセンターと顧客のどちらか一方に負担が偏っている状況がよくないのだとすれば、チャネル(顧客接点)に焦点を当てて見直しを検討することができます。ここで検討したいのは、ふたつの点です。そのチャネルはコールセンターでなければいけないのかを見極めることと、事業全体でのオムニチャネルの体制構築です。

コールセンターはCRMにおける重要な顧客との窓口ですが、すべてを電話口で解決する必要はありません。メールサポートも一般的で、スマホが当たり前になったことでインターネットも重要なチャネルとなっています。であれば、顧客を最適なチャネルへ誘導できればお互いの負担を減らすことにつながり、良質な顧客体験だということになります。

最適なチャネルへ誘導できていないというのは、たとえば「WebサイトのFAQを見ても分からなかった」「申し込み方法が分からない」などの理由で電話をかけてきたケースがあげられます。こういった声が集まるようなら、該当するチャネルの分かりやすさを改善することができます。そうすれば、顧客は最初にたどり着いたチャネルですべての課題を解決できるようになります。

オムニチャネルの体制を構築することは、当コラムでも何度もご紹介しているように、CRMの大きなトレンドです。オンラインやオフラインにかかわらず多くのチャネルを用意した上ですべてのチャネルが連携状態にあるオムニチャネルは、感動的な顧客体験を生むためのベースとなります。オムニチャネルの構築は簡単ではなく、事業に関わるすべてのチャネルの協力と長い構築期間が必要です。しかし一度構築できれば、どのチャネルで得た顧客の情報もすべてのチャネルで活かすことができ、ひとりの顧客への応対が効率化・高速化します。さらにその顧客のための解決策を提示する精度が上がるため、顧客体験価値の向上にもつながるのです。

どうやって負担のありかを発見するか

コールセンターオフィスの中でさまざまな分析を行うことでも無駄な負担を探すことはできますが、もうひとつ、外から探すという方法もあります。オペレーターやスーパーバイザー、マネージャーにかかわらず、スタッフ自身がコールセンターの顧客になってみることです。

何か機会があれば、実生活に結びつけられそうなところから探して、コールセンターへ電話してみてください。そこが良質な顧客体験を創造できるコールセンターであればよいところのヒントが得られるかもしれませんし、そうでないコールセンターなら自身がどこか負担に感じるはずです。そして負担に感じたポイントがあれば、それは自身のコールセンターでも起きていること、あるいはこれから起きうることかもしれません。

たとえば、電話をかけようとしたがそもそも電話番号がどこに書いてあるのか分からない、IVRでつながったはずなのにオペレーターが電話を取らない、向こうの都合で話を進められてうまく説明できない、などの負担が考えられます。自身が顧客になって体験することで、改善のためのヒントが得られるはずです。

顧客との関わりの“ちょうどよいところ”を探そう

コールセンターが担当すべきところ、顧客に任せたほうがよいところをしっかり見極めることが現在のCRMには重要。負担となっているところをうまく分けることで、効率化や顧客体験の創造につながります。セルフサービスのシステムが増加するなどCRMにまつわる環境はどんどん変わっているので、コールセンターとしてはどこを変えられるのか、検討してみてください。

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