コンタクトセンター向けクラウドCRM enjoy.CRMⅢ

コンタクトセンター運営のポイント 第30回:カスタマージャーニーを理解し、コールセンターの役割を見極める

その30:CRM施策に必要なカスタマージャーニーとは

CRM施策に必要なカスタマージャーニーの視点

顧客との関係を重視したマネジメントであるCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)は、2000年前後から存在している概念です。しかし、当時はコンピューターシステムを駆使して顧客の情報を管理することが重視されており、顧客視点とはいえないものでした。現在はCRMの捉え方が見直され、顧客視点で考えてビジネスを展開する方法が主流となってきています。

顧客視点でビジネスを考えるとき、避けては通れないのが「カスタマージャーニー」です。カスタマージャーニーを理解し、それをビジネス全体の施策のベースとすることで、効果的なブランディングを行っていくことができます。
ここでは、カスタマージャーニーを理解するための基礎となるカスタマー・エクスペリエンスについて、カスタマージャーニーの考え方から作り方、そしてコールセンターはどう関わっていくべきかについてご紹介します。

念頭に置くべきはカスタマー・エクスペリエンス

カスタマー・エクスペリエンスとは、「顧客体験」を意味する言葉です。マーケティングの分野では、「顧客がそのブランドと接するうえで積み上げたそのブランドに対する認識」という意味で広く使われています。ここでいう認識とは、意識的か無意識的かを問いません。
また、「顧客から見たブランド・商品・サービスの価値」という意味で用いられることもあります。言い換えれば、ブランド側が設定した価値は排して考えられます。ブランド側が設定した価値とは、相場に対して値段が安いから価値がある、専門家が効果を実証したから価値があるなどです。

良質なカスタマー・エクスペリエンスを提供できているブランドは、顧客から信頼に足るブランドだと認識されます。そうすると、たとえば「あの会社が作ったものだから」、「あのブランドから出ているものだから」という理由から商品・サービスが選ばれるということが起こります。もしも競合している商品・サービスに比べて値段が高かったとしても、選ばれる可能性があるのです。

カスタマー・エクスペリエンスを意識してビジネスを行っていくと、多くのメリットが得られます。
まず挙げられるのは、顧客ロイヤルティが向上していくというメリットです。顧客へ良質なカスタマー・エクスペリエンスを与えることができれば、顧客はそのブランドに対して好印象を抱きます。そうしてブランドの支持者が増えていくとともに、ブランドの社会的な価値も高まっていくのです。
ほかに、顧客自身に宣伝を行ってもらえるというメリットもあります。そのブランドや商品、サービスに好印象を抱けば、口コミでほかの人へ伝えると期待できます。現在はSNSの普及により、口コミのメリットはかなり大きいといえます。そして、もし口コミ効果が上がれば新規顧客を獲得するために多くの費用をかけずに済み、コストカットにもつながります。良質なカスタマー・エクスペリエンスにより顧客が離反しにくくなるというのも、コストカットにつながる要因のひとつです。

逆に、カスタマー・エクスペリエンスの質が低いと、顧客に「ブランドの乗り換え」をされてしまう危険性があります。計1,300社以上を対象としたあるグローバル調査では、カスタマー・エクスペリエンスの質が低かった場合、約90%もの顧客がブランドを乗り換えてしまうという結果が出ているのです。国内調査ではないので参考程度ではありますが、90%という数字は脅威だといえます。

良質なカスタマー・エクスペリエンスを起こすための方法のひとつが、カスタマージャーニーを理解したうえでさまざまな施策を行っていくことです。

カスタマージャーニーを用いてすべての顧客接点をつなぐ

カスタマージャーニーとは、顧客がコンバージョンへ至るまでの道筋を旅(ジャーニー)に喩えたマーケティング用語です。コンバージョンは「成果へ転じること」を指し、たとえば商品の販売であれば「購入」、サービスを知ってもらう目的のウェブサイトであれば「資料請求」がコンバージョンに設定されます。化粧品を例に挙げると、「SNSで新しく発売されたことを知る」→「ウェブでその化粧品の詳細を調べる」→「実際に店舗へ見に行く」→「電話で注文する」という流れがカスタマージャーニーの一例です。

ここで挙げた例のように、コンバージョンへつながるまでに顧客はさまざまなプロセスを経ています。カスタマージャーニーを把握して全体を俯瞰することができれば、どのように顧客へアプローチすればコンバージョンへつなげられるのか、どのポイントに課題があるのかを発見しやすくなります。
SNSに代表されるインターネットが普及する前は、テレビ、新聞・雑誌の記事や広告から店舗といった具合に、カスタマージャーニーは比較的単純でした。ですが、インターネットが普及した現在、顧客が情報を知る箇所が多岐にわたるため、このカスタマージャーニーはきわめて複雑になっています。

カスタマージャーニーを把握できず、顧客の行動が途中で途切れてしまった場合はどうなるでしょうか。
上記の化粧品の例では、ウェブサイトのコンテンツが充実していない場合にカスタマージャーニーが途切れてしまうと考えられます。つまり、その化粧品の存在を知ったところまではいいものの、ウェブサイトに十分な情報がないので興味が薄れてしまうという例です。ほかに、「ウェブサイトにはあった情報を店舗スタッフが把握していない」などもカスタマージャーニーが途切れてしまう例のひとつです。
こうなってしまうと、化粧品は当然購入されませんし、そのブランドに対する信頼度も落ちてしまうと考えられます。

こういったケースを防ぐために、各接点だけで考えるのではなく情報を共有して、個々の接点で均一のレベルで対応しましょうというオムニチャネルという考え方が普及してきています。
オムニチャネル戦略においてカスタマージャーニーをしっかり把握することができれば、何をすればコンバージョンへつなげられるのかが分かりやすくなります。
同じく上記の化粧品の例では、「ウェブサイトの情報を充実させる」、「ウェブ担当者と店舗の担当者が連携を図って研修を充実させる」が対策として挙げられます。ただ、店舗スタッフへの研修が自社の干渉できる範囲外であるために対策を講じにくいなどのケースが考えられます。こういった場合は他社を巻き込み、連携を図る、依頼して任せてしまうなどで対応しましょう。カスタマージャーニーを追えば、このように自社だけでは対策が難しいところをどうするかという課題にも対応しやすくなります。

カスタマージャーニーを把握するためには、顧客がどのようなプロセスを経るのかを可視化する必要があります。カスタマージャーニーを分かりやすくフロー状にまとめたものを、「カスタマージャーニーマップ」といいます。

カスタマージャーニーの作り方に決まりはありませんが、主に含めたほうがよいものはあります。
まず必要なのは、各顧客接点における顧客の行動です。顧客接点にはSNSやウェブサイト、実店舗、コールセンターなどが挙げられます。コンバージョンにつながる場合にはどのような行動が考えられるのかをここで設定し、カスタマージャーニーマップのベースとします。
次に、顧客の情報をカスタマージャーニーマップに含めます。顧客の情報は、定性的な情報と定量的な情報に分けられます。定性的な情報とはそのときに考えていること・感じていることで、定量的な情報は感情のレベルを数値で表したものです。考えていること・感じていることは、インタビューを行う、実際の行動を観察する、社内のターゲットに近い人を仮想顧客としてヒアリングするなどで調べることができます。感情のレベルは、定性的な情報から類推したり、アンケート集計やウェブサイトのアクセス解析を行ったりして設定することができます。
そして、ブランド側がどうアクションするかを含めれば基本的な形が整います。顧客の情報とアクションの2つを顧客接点における行動と連動させることで、隙間ない施策を構築することができます。

そうして途切れることのないカスタマージャーニーを実現することができれば、それは良質なカスタマー・エクスペリエンスにつながるといえます。カスタマージャーニーがしっかりしていれば各顧客接点ですべきことが見えやすいので、一度離脱していた顧客が何かしらのきっかけでカスタマージャーニーに戻ってくるなどのイレギュラーにも対応可能です。

コールセンターはカスタマージャーニーにどう関わるか

顧客に良質なカスタマー・エクスペリエンスを与えるために、コールセンターはどのような役割を担えるでしょうか。

もしほかの顧客接点との連携がないのであれば、カスタマージャーニーに沿ったカスタマー・エクスペリエンスは起こせないといえます。たとえば、実店舗で購入した商品の使い方が分からず、不良品だと勘違いしてコールセンターにクレームの電話をかけてきたケースを考えてみます。そこでコールセンターが完璧な対応を行い、商品の正しい使い方を伝えられたら、オペレーターに対しては「丁寧に対応してもらってありがたい」と感じてもらえるはずです。しかし、「そもそも使い方が複雑でなければ怒ることもなかったのに」という不満も残ってしまうことが考えられます。このケースではカスタマージャーニーが途切れており、ブランドに対する信頼度が上がるようには考えにくいのです。

コールセンターは企業の顔という側面があります。コールセンターは独自の応対品質を上げていくだけでなく、各顧客接点との連携を密接にし、企業の顔として回答し、対応していくことが大切です。たとえば、ウェブサイトで会員登録が行われればコールセンターからもその情報を参照できる、コールセンターに寄せられた意見を実店舗などへ共有するなどが挙げられます。

各顧客接点、そしてバックオフィスなどビジネスに関わるすべてのセクションと連携を図っていくためには、そのためのシステム構築が必要です。enjoy.CRMⅢなどのCRMシステムにはほかのセクションとの連携を容易にする機能が備えられており、良質なカスタマー・エクスペリエンスの創出に大きく貢献します。また、データを蓄積していくことにより、定量的なデータに基づいたより正確なカスタマージャーニーマップの作成が可能となります。

業種によってコールセンターの重要度は変わりますが、各セクションとの連携を強めることで、カスタマー・エクスペリエンスをどんどん良質にしていくことが可能です。

カスタマージャーニーをベースに、隙のないブランディングを

カスタマージャーニーをしっかり設定すれば良質なカスタマー・エクスペリエンスを実現できるというのは、上記のとおりです。良質なカスタマー・エクスペリエンスを実現し続けられれば、それは効果的なブランディングとなり、そのブランド・商品・サービスは顧客から大きな信頼を得られるようになります。

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