コンタクトセンター向けクラウドCRM enjoy.CRMⅢ

顧客を中心にコンタクトセンターからDXを実現

コンタクトセンター運営のポイント 第53回:“改善”だけのCS向上を脱却し、“新たな価値”の創造を目指す

その53:魅力的品質を生み出す重要なポイントとは

現在のCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)においては、一人ひとりの顧客にご満足いただけることを重要視し、CS(Customer Satisfaction:顧客満足度)を高めることが不変の命題となっています。そのためには、商品やサービスの質を改善したり、コールセンターにおいては応対品質を改善したりといった努力が日々行われるわけですが、“改善”だけではすぐに頭打ちとなってしまいます。では、どのようにすれば“新たな価値”を創造できるのでしょうか。

改善だけでは顧客の離反を招く

コールセンターの重要な業務のひとつに、クレーム対応があります。一つひとつのクレームはCRM施策にとって宝であり、その意見を参考にして品質改善を行うことは非常に重要なことです。しかし、こればかりに従事するのでは次にまた利用してもらうためには不十分だといえます。なぜなら、場合によっては改善とはマイナスがゼロに戻っただけであり、顧客からすれば「当たり前」の状態に戻ったと認識されることがあるためです。

品質改善を顧客満足度にどう活かすかを考える上において、実際に行った品質改善が、顧客にどういった印象・影響を与えるかを考えることは非常に重要です。たとえば、コールセンター業務においてオペレーターが正確な回答をすること、迅速な対応をすること、好感の持てる話し方をすることは品質改善のひとつではありますが、プラスの評価にはなりにくいのです。これらの要素をクリアすることで顧客は満足するかもしれませんが、「問題は解決したのでもう終わり」と、次にはつなげにくいといえます。

むしろコールセンターにおいては、思ってもみなかった柔軟な対応、不安や怒りの気持ちを分かってくれる共感、この会社(オペレーター)に任せておけばいいという安心感が重要で、顧客にとっての大きな満足感を感じることになり、次につながるわけです。

このあたりは顧客満足度と品質の関係性を示した「狩野モデル」と呼ばれる考え方が参考になります。狩野モデルは品質を大きく3つの品質に分類しています。できていても当たり前、なければ不満要素となる「当たり前品質」、できていれば評価があがり、できないと評価が下がる「一元的品質」、あるだけで満足し、なくても仕方ないと受け取られる「魅力的品質」の3つです。先に挙げたオペレーターが正確な回答をすることは顧客から見れば当たり前の「当たり前品質」であり、スピーディーに対応することも早ければ早いほど良く、遅ければ評価が下がる「一元的品質」といえます。顧客からの評価を大きなプラスにもっていくためには、いかに「魅力的品質」を生み出すかが重要なポイントになります。

また、別の論点からも改善だけの施策ではリピーターになってもらうことは難しいといえます。CSとリピート率の関係を調べたある調査結果によると、やや満足した層のほとんどは繰り返しの利用につながらないことが分かっています。つまり、そのサービスに満足してもらうだけでは定着にはつながらず、大いに満足してもらう必要があるということです。

もしも、CSは確実に上昇しているのに売上などの定量的な成果として現れていない現状があるのであれば、そのコールセンターでは改善だけのCS向上に終始している可能性があります。これを脱却するには、新たな価値をスコア化するための評価項目を設けることが大切です。まずは、モニタリングやミステリーコールなどの現在の評価項目を見直してみてください。顧客にはできて当たり前と思われてしまう「当たり前品質」「一元的品質」に偏っていれば、その評価項目は見直しが必要だといえます。

「魅力的品質」で満足してもらうにはどのような応対をすればよいでしょうか。キーワードは柔軟性、共感、そして安心感です。柔軟に対応し常に顧客に対してプラスワンのサービスを意識すること、顧客の状況を十分理解し共感すること、そして顧客にこの人に任せて大丈夫という安心感を与えることがポイントです。そのコールセンターがどのような目標を持って運営されているか、どのような体制で動いているかによって具体的な動き方は変わりますが、基本的にはオペレーターが自身の判断で動ける範囲を増やすことが効果的です。マニュアルやスクリプトで画一的なクオリティーを目指すことも大切ですが、できるだけ多くの事例をルール化しようとするのはCRMの実際と反することになります。CRMの実際というのは、顧客の要望は絶え間なく変化し、ひとつ満足すればまた次の要望が生まれてくるというもの。このような状況下では、ある程度の応対スキルを持ったオペレーターが現場判断で柔軟な対応をすることが大きな効力を発揮します。もちろん、そういったオペレーターの動きをバックアップするためのコールセンターとしての動き方も非常に重要です。

電話応対に奥行きを持たせる組織力

オペレーターが柔軟な対応を行い、コールセンターがそれをバックアップするというのは、実際には簡単なことではありません。乗り越えるべき課題はさまざまですが、魅力的品質を生み出して顧客に満足してもらうためには、オペレーターを孤独にしないことが大きなポイントとなります。

オペレーター一人ひとりが対応できる範囲は限られているため、かかってきたコールすべてに対応するのは現実的に不可能です。また、IVR(Interactive Voice Response:自動音声応答)が適切なコールセットへ上手に誘導できなかったり、顧客が自らの課題を正確に把握できていなかったりといった要因も考えられます。しかし、そういった対応できないケースが発生した際、たとえば「その件に関しては対応できかねます」「店舗のほうへご確認ください」などのような対応をされると顧客はよい思いをしません。

ここではセリフ文のみを例示しているので余計に淡白に感じられるかもしれませんが、このようなある種の拒絶、すなわち企業側の押し付けのような対応をしてしまうのは、オペレーターが孤独の中にあり不安感を拭いきれないからだと考えることができます。つまり、対応にミスしてクレーム問題に発展した際に、オペレーターはコールセンター側が守ってはくれないと感じているのです。

「オペレーターが本当に困ったときは遠慮なくエスカレーション可能な雰囲気が醸成できている」「オペレーターが応対のために必要な支援ができる体制が整っている」など、オペレーターを孤独にさせないコールセンターを作ることが重要です。オペレーターが安心してコールに出ることができるコールセンターであれば、同じように対応できないと断る場合でも、顧客の感じ方はだいぶ変わります。さらに、バックアップ体制がきちんとしているコールセンター・企業であれば、そもそも対応できないというケースを減らすことが可能です。オペレーターは自身の判断でさまざまなパターンに対応することができるので、正確性や迅速性を保ったまま、柔軟性のある顧客体験を提供することができるようになります。

オペレーターの柔軟な対応は顧客に思っていた以上の満足を与えることができ、柔軟な対応を見せることで、顧客からはその組織の奥行きが見えるようになります。対応しているのはオペレーターひとりですが、その後ろにある組織が協力して解決に当たってくれていることを肌で感じられるのです。これは、このオペレーター、この企業なら任せてもいいという安心感につながります。そして、マニュアルとスクリプトにがんじがらめにされたオペレーターはまるで機械音声のようになることもありますが、上記のようなコールセンターであれば声や対応に「人間味」が出てきます。そこでオペレーターが顧客の感情に寄り添い、上手に共感の言葉を届けることができれば、強い共感へとつながります。

このようにして柔軟性、共感、安心感を高いレベルで満たすことができるコールセンターは、CSを上げ、売上などの面にも大きく貢献することができるはずです。

顧客の想像を超えた価値がCRMの真髄

CRM施策においては、足りない点を補うような「改善」メインの内容では顧客にはなかなか響きづらいといえます。改善を疎かにしていいというわけではありませんが、それと平行して、新しい価値を創造し提供するということが、現在のCRMには求められています。顧客との接点として重要な立ち位置にあるコールセンターは、その責任があり、それを実現できるチャンスを多く持っているといえるのです。

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