コンタクトセンター向けクラウドCRM enjoy.CRMⅢ

顧客を中心にコンタクトセンターからDXを実現

コンタクトセンター運営のポイント 第46回:“事前期待”をカテゴライズし、課題を的確に解決するには

その46:“事前期待”の考え方、カテゴライズでできる事とは

CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)の施策を担うコールセンターにおいて、CS(Customer Satisfaction:顧客満足)を高めることは重要な命題だといえます。CSを高めるためにはさまざまな施策がありますが、具体的に何をどうするのかという指標が現場のオペレーターに共有されていなければ、空回りしてしまう可能性も考えられます。顧客に満足いただくには、まず“事前期待”を知ることが大切です。ここでは、事前期待とはどういった考え方なのか、カテゴライズすることによって何ができるのかをご紹介します。

顧客の事前期待を知ることで解決の道標が見えてくる

事前期待とは、JCSI(Japan Customer Satisfaction Index=日本版顧客満足度指数)において顧客期待として定義されていますが、顧客がその企業のサービスを利用するとき、それによって得られる“何か”に期待しており、この期待通りのサービスを受けられたとき、あるいは期待を超えるサービスに出会えたとき、顧客はそのサービスに満足するという考え方です。この“サービスを利用する前に抱いている期待”が事前期待(=顧客期待)と呼ばれているものです。CRMの拠点として顧客との関係を重視するコールセンターにおいては、特に重要な考え方だといえます。

顧客それぞれが抱く事前期待は千変万化のため、事前期待を正確に把握できなければ課題を解決することは難しいといえます。「事前期待を把握してCS向上につなげる」というのはコールセンターにおいて基本的な業務のモデルであり、多くのコールセンターが日々実践していることですが、なかなか実績や実感には結びつかないというのが現状ではないでしょうか。

事前期待をCSに結びつけるために必要なのは、「顧客の声を拾い上げよう」といった声かけ以上に、論理的な分析と現場への落とし込みです。事前期待の考え方や、事前期待を把握した上でどのような応対ができるのかという方法をオペレーターが知らなければ、オペレーター個々人の感覚に任せてしまうことになります。事前期待についてきちんと現場で共有し、各々のオペレーターがそれに備えることができれば、何がCSにつながるのかを考えながら応対に当たることが可能です。

事前期待の細分化

どのような事前期待を持った顧客が多いのかはコールセンターによって異なるため、コールセンターそれぞれで分析することが必要です。なお、一口に事前期待といっても、その内容によって細分化することが可能です。それぞれの事前期待を把握し、それに対する準備をしておくことで、多くの顧客に満足してもらうことが可能です。

まず抑えておく必要があるのは、多くの顧客に共通する事前期待です。すべての顧客、あるいは多くの顧客が同じように抱く事前期待は、比較的把握しやすいといえます。コールセンターにおいては、「すぐにオペレーターにつながること」「一回の電話で問題が解決すること」「言葉遣いが丁寧なこと」などがあげられます。これらの事前期待についてはほとんどのコールセンターにおける課題で、KPIとして設定するなど十分に対策しているセンターや対策が効果を発揮していないセンターといろいろありますが、これらの事前期待に応えても高いCSにはつながらないという点に注意が必要です。顧客にとっては当たり前ともいえるような期待であり、期待通りだったから満足するというよりは、期待外れだと失望してしまう類のものだといえます。

もちろん、高いレベルのCRM施策のためには共通の事前期待には常に応えていく必要があります。これらへの対策は、さまざまな箇所のマニュアル化や画一化された研修による応対品質の統一があげられます。いつ、誰がコールセンターに問い合わせても同じようなサービスを受けられることが、CSにつなげるための第一歩といえます。IVR(Interactive Voice Response:自動音声応答)の最適化など、システム面の改善も効果的です。

もう1つ考えておかなければならないのは、顧客個別の事前期待です。文字通り顧客ごとに異なる事前期待のことで、これに対していかに正確に応えていくかがコールセンターの腕の見せ所だといえます。たとえば、同じ修理依頼をするとしてもあらかじめ有償の保守契約をしている場合と、無償のサポートデスクへ問い合わせする場合では顧客の事前期待は異なります。あるいは、問い合わせに対して2つの解決方法があったとき、ある顧客は一方を好むが別の顧客はもう一方を好むという違いも考えられます。これらの事前期待ひとつひとつに応えていくことで、顧客にとっての結果は期待を上回り、CSの向上につながるというわけです。

顧客個別の事前期待に応えるための対策は、主に2種類。まずは、コールの中で顧客の抱えている課題をすぐさま特定するオペレーターとしてのスキルの向上です。CRMにおいては、顧客のデータをしっかり保管・分析してそれに沿った対応をすることが基本ですが、初めて電話をかけてくる人、ほとんどデータがない人に対してはオペレーター個々人の応対スキルが結果を大きく左右します。

そして、顧客情報の収集・整理が顧客個別の事前期待に応えるためのカギとなります。CRMの基本である情報の収集・整理は行っていても、十分に運用できていないケースは多くみられます。本当に必要な情報を収集できていなかったり、それをオペレーターがスムーズに活用できていなかったりすれば、もちろん事前期待を超えることはできません。システム面を改善するなどして、現場がスムーズに動けるよう最適化していく必要があります。

そのサービスや製品に関わるすべての顧客接点がつながる「オムニチャネル」の体制を整えることは、顧客個別の事前期待に応える上で大きな力を発揮します。オムニチャネルではコールセンターやWebサイト、実店舗などの顧客接点すべてが協力し、顧客に関するデータを共有、そして次にどの顧客接点から関わりがあっても変わらぬサービスを提供することを目的としています。この体制をしっかり構築することができれば、実店舗から受け取った情報をオペレーターが活用したり、逆にオペレーターが共有した情報を実店舗で活用してもらったりといったことが可能になるのです。効率的に運営できれば、顧客個別の事前期待を大きく超えた満足が実現できるはずです。

他にも変化する事前期待や、無意識の事前期待といったものも考えられます。均一で高水準の応対品質を確保し、その顧客に関する十分な情報をオペレーターが持っていたとしても、さまざまな要因によって事前期待は変化するものです。たとえば、製品の故障に関する問い合わせだとしても、至急修理が必要な場合と修理を翌日以降まで待てる場合では求める対応が異なります。あるいは、初めての故障で対応がわからず不安に感じているケースと、一度故障して修理したはずが再度故障した場合では、顧客の心中も異なりますし求める回答・対応も異なります。その状況によって生じている事前期待を持った顧客に満足してもらうためには、臨機応変に対応するオペレーターのスキルが必要だといえます。

このスキルを鍛えるためには、継続的なロールプレイングの実施が効果的です。特に、コールリーズンを何度も切り替えるタイプのロールプレイングだと、コールの初動で解決すべき課題を特定できるスキルが身につくといえます。

また顧客自身が気づいていない無意識的な事前期待もあります。オペレーターが優先して解決すべきは顧客が意識的に話している課題ですが、その裏に、無意識的な事前期待が隠れていることがあります。それを上手く汲み取って解決することができれば、顧客にとっては予想していなかった大きな感動、いわゆるCustomer Delight(=顧客感動)となります。あるいは、こういった事前期待を超えたサービスはオペレーター自身も意識せず偶然発生する可能性もあります。

こういった顧客体験は意識して創造することが難しいため、優秀な事例をコールセンター内で共有することが大切です。そうすることで、そういう応対の仕方があることを知ったオペレーターは、何かのきっかけで同様の応対を再現できる可能性があります。オペレーター同士の自発的なコミュニケーションがあればよいですが、オペレーター任せにせず、コールセンター側が積極的にそういった場を設けるようにしましょう。

的確なCRM施策を

事前期待をしっかり把握し、その事前期待にはどのような対応を行うという仕組みが現場のオペレーターに浸透することで、顧客の持つ課題をより的確に解決することが可能になります。顧客に感動を届けられるコールセンターとなるために、上記の施策を行っていくことが大切です。

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