高いレベルでCRMを達成するためには、コールセンター業務を改善していく必要があります。顧客満足度を高めていくことによって成功となるCRMにおいて、コールセンターは重要な位置づけにあるためです。
業務を改善していく際、各オペレーターに時間あたりの対応コール数などの目標を設定するだけでは不十分といえます。コールセンター全体で手段を共有しておかなければ、全体の応対品質のバランスが崩れてしまうだけでなく、コール数を達成しようとして顧客の課題の解決が不十分なまま通話を切り上げてしまう例がみられます。それで目標数を達成できても、顧客に不満が残ってしまうとCRMとしてはむしろ失敗といえます。
コールセンター業務を改善していくなら、まずは分析から始めましょう。
まず忘れてはならないのが、応対品質です。CRMの目的を達成するためには顧客が満足する必要があり、応対品質を上げることで高い顧客満足度を得ることができます。そして、品質が大切だとはいっても、通話時間を考えないというわけにはいきません。時間あたりのコール数などを生産性とし、応対品質と二軸で考えていくことが大切です。
生産性は、毎日の記録によってデータが蓄積されます。応対品質は、モニタリングなどをして定期的に評価をおこなうことが重要です。この2つの数値を縦軸、横軸としてグラフにまとめると、4つの区分ができ上がります。どのオペレーターがどの区分に属しているのかを確認し、必要な改善策を練っていくのが効率の良い改善方法です。応対品質は良いが生産性が少ない人と、生産性はあるが応対品質に問題がある人では対策がまったく逆になります。
高いレベルのCRMを意識するのであれば、応対品質と生産性の両方の向上が必要です。ここでは主に、後者の生産性を上げるにはどうすればいいかについてご紹介します。
1つのコールに対して使用した時間を示すAHT(Average Handling Time:平均処理時間)を短縮することで、生産性を上げることができます。
ここで考えなければならないのは、AHTはオペレーターの一存で短くすることはできないという点です。特にインバウンドのコールセンター業務においては、顧客の抱える問題や要望を解決できるだけの時間を要するため、いわばAHTの長短は「顧客次第」となります。顧客との関係性を重視するCRMでは、顧客の理解が得られないまま勝手に話を進めることはできません。
ただし、コールセンター側でまったく短縮できないかというと、そうではありません。CRMの目的をどこに置いているかによってAHTは変わりますし、コールセンターによって偏差にもばらつきはありますが、コール内容をしっかり分析することによってある程度の短縮が可能です。
分析する際に係数を出すなら、各コール・各オペレーターの平均値を出すのではなく、中央値を出す方が効果的な場合が多くあります。たとえば、時間あたりのコール数が5、10、12のオペレーター3人がいるとすると、平均値は9ですが、中央値は真ん中の10です。こうした中央値は、様々なデータを分析する際に参考にできる数値となります。
AHTの短縮を図る際は、ATT(Average Talk Time:平均通話時間)とACW(After Call Work:後処理時間)に分けて考えると効果的です。AHTというくくりで考えてしまうと、細かいところに目が行かず、すぐに解決できる問題を長らく放置してしまう可能性があります。コールが終了した後の事務処理があることも意識に入れることでAHT全体の短縮を図ることができ、CRMとしても前進することができます。
まずは、通話時間の短縮を考えましょう。
AHTの中でもATTは特に顧客に左右される部分なので、単純に「縮めよう」と意識するだけでは不十分といえます。そこでおすすめしたいのが、コールフロー分析です。
録音したコールを選び、その中身を分析します。今後の改善につなげていくためには、長いコールが望ましいといえます。もちろん、短いコールの中に多くの改善点が隠れている可能性もありますので、「このトークは良くなかった」というのが分かるのであれば、それを選ぶのが一番です。CRMを包括的に良くしていくためには、複数のパターンのコールを分析することも効果的です。
コールフロー分析にもいろいろな方法があります。その中の1つに、テープ起こしをしてみるという方法があります。コール内容を文字に起こしてみることで、話しているときには全く気づかなかった改善点が見えてくることがあります。説明が要領を得ていなかったり、顧客が何度も同じ質問をしていたり、早く説明しようとして難解な用語を使用していたり、といったものです。こういった改善点は自分より他人の方が気づきやすいので、可能であればコールセンター内でグループを組み、お互いのコールを見てみるといいでしょう。その繰り返しが、CRMの質を高めます。
コール内容を段階に分けてみることも効果的です。顧客の用件を聞いている時間やその返答をしている時間、または相談をしている時間などに分けて見ることで、どこの工程を特に改善すればいいのかが見えてきます。コールセンター業務は基本的に忙しいので、注力すべきポイントを明確化することがCRM改善の早道となります。
また、コールフロー分析はベンチマークの設定にも役立ちます。応対品質を上げるためには改善点を直す以外にも、良い例を目指すことも大切です。顧客の満足を得つつ、的確に話を進めてATTの短縮に成功しているコールがあればベンチマークとし、同じ弱点を持つオペレーター間で共有することが重要です。
次に、ACWの短縮です。ACWはATTと違い、コールセンター業務の中でもオペレーターが主体的に短縮できるところなので、コールセンター全体で積極的に改善を行っていくべきといえます。また、ACWはオペレーター個々の能力によりバラつきも多く生まれるところです。ACWの時間が長いオペレーターを教育することにより、全体のAHTを大幅に短縮することも可能です。
そのためには、処理内容の最適化を行いましょう。コール後に情報を入力する箇所が多かったり複雑だったりすると、1つひとつの作業を逐一確認する必要があるため、時間のロスにつながります。また、上司や他部署への確認が頻発するコールセンターであれば、その確認や連絡でタイミングが合わずに時間がかかっている、ということが考えられます。
CRMの改善のためには、顧客に向き合う仕事だけが全てではありません。事務作業を素早く終わらせて次の顧客のコールに出ることも、CRMの大きな改善へとつながります。そのためには、作業項目を一部廃止することも検討に入れるといいでしょう。逐一入力したり報告したりしているものの、結局そのデータや内容を誰も見ていない、といったことがあれば非常にもったいない話です。
入力欄の最適化も有効です。項目を減らせないのであれば、オペレーターが入力しやすい環境を作ることがコールセンター全体のAHTの短縮につながります。
CRMにおいて意外と軽視されがちなのが、各オペレーターのPCスキルです。タイピングスピードや各機能の使いこなしに不安があることでACWを長くしている可能性があるため、その場合は入力訓練などの研修を行いましょう。簡潔な文章の書き方など、一見関係なさそうなスキルもコールセンター業務に活かされる場合があります。
質の高いCRMを目指すためには応対品質こそが大切、と叫ばれる時代になりましたが、生産性にも目を向けることで、コールセンター全体の業績を上げることが可能となります。