CX向上を実現するコンタクトセンター向けCRMソリューション
2019年に顧客サポートを実現できる「enjoy.CRMⅢ」を導入された株式会社ヨシダ様。今回、応対履歴の均質化、ACW(後処理時間)短縮を目的に、同製品が「生成AIによる支援機能」を搭載するにあたり、その効果を評価されました。
所在地 | 東京都台東区上野7-6-9 |
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設立 | 1906年11月 |
設立 | 1961年5月 |
代表者 | 代表取締役社長 山中 一剛 |
事業内容 | 歯科医療機器・材料・コンピューターなどの開発・販売および輸入、歯科診療所の開業・経営に関する企画・調査などの総合コンサルティング |
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背景
評価
写真左から、コンタクトセンター部 部長の吉井 彰子氏、
CS推進本部 コンタクトセンター部 次長の中山 貴史氏
ナレッジ強化、VOC活用─これらCX(カスタマーエクスペリエンス)改善施策の源泉は応対履歴だ。しかし、ピークタイムに応対を優先して入力できなかったり、オペレーターごとに品質がバラつきがちだったりと、課題を抱えているセンターは多い。
歯科医療機器の開発・販売大手のヨシダは、生成AIを活用してコンタクトセンターの応対履歴の課題を解決、CX向上を図っている。同センターは、主に歯科医師や自社営業マンから、治療の際に座るユニットやレントゲン、レセプトコンピューターといった取り扱い製品に関するお問い合わせに対応している。製品の操作方法などに加え、「マイナ保険証を利用したオンライン資格確認のやり方」といった最新の専門知識が求められる用件も多いため、ナレッジの鮮度がCXに直結する。コンタクトセンター部長の吉井 彰子氏は、「お問い合わせのトレンドの変化が激しいなかでナレッジの鮮度を保つには、応対履歴の品質が重要です」と強調する。そのため、研修などを通して文章の粒度や書式の統一といった均質化にも努めていた。
ところが、近年はお問い合わせ件数が増加傾向にあり、生産性向上も課題として浮上。AHT(平均対応時間)の改善を図るなかで、ACW(後処理時間)短縮に向けた取り組みが始まった。「いかに迅速かつ確実に均質な履歴を残すか」という観点でIT活用を検討。生成AIによる通話テキストの要約プロジェクトを始動した。
プロジェクトのパートナーとして選んだのは、OKIソフトウェアだ。2019年3月から運用している同社のCRMシステム『enjoy.CRMⅢ』の支援機能として、Microsoftの生成AIサービス『Azure OpenAI Service』と連携した「応対履歴の自動作成」の拡充が検討されており(※2024年4月リリース済)、実証フェーズで先行導入することとなった。吉井氏は、「CRMシステムの導入・運用で、当社の業務を熟知したうえでの寄り添った支援を受けられている実績が決め手です。安心して新しいことに挑戦できるパートナー」と評する。
応対履歴の自動作成は、リアルタイムの音声認識を利用して顧客応対をテキスト化し、生成AIが要約。それをenjoy.CRMⅢの応対履歴画面上の要約ボタンをオペレーターがクリックすると、入力項目に要約結果が反映される。
要約のプロンプトは、OKIソフトウェアから提供された標準的なプロンプトをベースに、CS推進本部 コンタクトセンター部 次長の中山 貴史氏が中心となってテストを繰り返しながらタスク(業務)への最適化を図り、アウトプットとなる要約文の精度を高めた。「お問い合わせ内容を『表題』『内容』『回答』の3つに分け、内容と回答は時系列で箇条書きにするようプロンプトを作成しました」と説明する。さらに、製品別に適切な文字量を設定、1つのお問い合わせのなかに複数のリーズンが含まれていても漏れなく履歴に残せるようにした。
応対履歴が自動作成されることにより、後処理は「要約文の誤字脱字や事実誤認チェック&修正」「登録」の2ステップで完結できるようになった。PoC(概念検証)では、300件程度の通話音声サンプルを使用。中山氏は、「肌感覚として、75%~80%ほどの精度で要約できていました。とくに応対が一問一答に近い製品に関しては、ほぼそのまま使える状態でした」と成果を述べる。吉井氏は、「品質にブレがないため、ナレッジにも転化しやすく、更新サイクルもより早く回せます」と期待を述べる。
生産性の面でも効果がみられた。オペレーターの手入力と比較した結果、ACWは約15%短縮。「応答率も10ポイント改善できる見込みです」(中山氏)。副次的な効果として、応対に集中して疲弊した状態で履歴を入力しなくてよくなったことから、オペレーターのストレス緩和も認められたという。
今後は、本格的な運用に向けて、音声認識システムの選定を実施する方針。中山氏は、「歯科医療に関する専門用語が多く含まれる会話が中心のため、前段階となる通話音声のテキスト化の精度が要約の品質に大きく影響します」と理由を述べる。
このほか、応対履歴の活用拡大も検討している。「プロンプトを使って、営業や開発といった他の部門が求めている情報に合わせて要約して連携することで、営業活動や製品の改善につなげ、CX向上に貢献していきたい」(吉井氏)。さまざまなITを活用し、コンタクトセンターのDXを進める方針。
応対履歴の均質化、ACW(後処理時間)短縮を目的に、従来から運用しているOKIソフトウェアのCRMシステム『enjoy.CRMⅢ』の生成AIによる支援機能「応対履歴の自動生成」を活用。
機能追加とヨシダのコンタクトセンターにおけるオペレーション課題の解決を図ろうとしたタイミングが合致していたことに加え、新しいことに取り組むにあたって「自社の業務を熟知していること」「サポート体制の手厚さ」の2点を評価した。
OKIソフトウェアから提供された標準的なプロンプトをベースに、現場主導でテストを繰り返し、ナレッジへの活用を前提として項目設計、書式や文字量の最適化を図った。結果、ナレッジ更新のサイクルを回しやすくなったとともに、ACWの15%削減を達成。今後は要約の精度向上に向け、音声認識システムの選定を行う方針。また、他部門が求めている情報に合わせた要約といった応対履歴の活用拡大も検討している。