コラム

「イノチャ」から生まれた変革~OKI AI Chatシステム~

河岸AI加工後(注釈入り)

OKIソフトウェア北海道支社の河岸です。
普段は金融機関向けのシステム開発担当で、PC周りのガジェット好きです。
最近キーボードの奥の深さに魅了されています。

本題に入りましょう。

OKIソフトウェアでは、「イノチャ(※)」というビジネスコンテストを毎年開催しています。

  • 「イノチャ」についての詳しい説明は下記の過去のコラムを参照してください。

私たち北海道支社のメンバーは、22年度下期に実施された「イノチャ」に下記のテーマで挑戦しました。

OKIは、生成AIを使いこなす!プロンプトエンジニア育成の第一歩 ~ Chat GPT編 ~

当時、まだ社内では生成AIに関する取り組みが活発ではない状況でしたので、私たちのこの画期的なアイデアは、意欲や将来性が評価され、見事「最優秀賞」を受賞しました!

「最優秀賞」を受賞

今回は、「イノチャ」での受賞から、社内のローカルな活動を経て、OKIグループ全体の社員が利用する「OKI AI Chatシステム」の開発に私たちが参画できるようになるまでのお話をお伝えします。

イノチャアイデアの内容

私たちのアイデアは、「生成AIを社内に導入し、AIを使いこなせる人材育成&AI活用推進を通して、他社との競争力を強化し、顧客ニーズに応え続ける企業になる」ことを目指していこうよ!というものです。

ChatGPT

「イノチャ」で受賞し、かつ投資対象のテーマとして選ばれると、社内で実現に向けての活動が認められます。
OKIソフトウェアでは、半歩先の技術の検証・人材育成のために新技術ワーキンググループ(以下、新技術WG)という施策があります。
私たちは、新技術WGの1つであるデータ分析・AI-WG内で、「生成AI」をテーマとしたサブワーキンググループ「AI chatbot SWG」を立ち上げて、アイデアの実現を目指す活動を始めました。

WGの活動内容

AI chatbot SWGは、技術と人材の両面でのイノベーションを目指し、主なミッションとして「独自データを活用したAIシステムの開発」と、「生成AIを利用するための知識共有」の2つを実施しています。

●独自データを活用したAIシステムの開発
一般的にはRAG(Retrieval-Augmented Generation)と呼ばれる技術で、ChatGPTのAIモデルが有していない独自データを検索してから、GPTモデルでの自然言語の回答を生成する方法を調査しました。この基礎調査を通じて、アプリ開発の実践的なスキルを身につけ、独自データを活用したAIシステムを構築するための土台を築くことができました。
また、ユーザーが真に欲しかった回答を得られるよう、回答精度の向上にも取り組みました。

●生成AIを利用するための知識共有
生成AIを使いこなせるメンバーを増やすために「そもそもChatGPTでどんなことができるのか」「どのような入力をすれば望む回答が得られるのか(プロンプトエンジニアリングの方法)」を調査し、自ら生成AIの可能性を探求しました。得られた知見はOKIグループの全社員がアクセス可能な形で公開され、技術的な洞察と実践的なガイダンスを提供する重要なリソースとなっています。
利用者の体験談の記事も作成しており、色々な方に楽しんでいただけるよう、継続してコンテンツを増やしています。

OKI AI Chatシステム開発の挑戦と革新

AI chatbot SWGの活動が進む中で、OKIグループ全体でも、生成AIをセキュアに業務で活用できるチャットシステム(Chat GPTを導入したOKIグループ全社員が利用可能な「OKI AI Chatシステム」)の要望があがりました。
そこで私たちのWG活動が、「OKI AI Chatシステム」を検討していた部門の目に留まり、このシステムの開発を任されることとなりました。

このプロジェクトでは、二つの主要な挑戦がありました。
新技術である生成AIの活用」と「未経験のクラウド開発」です。
特に私が属する北海道支社では、クラウド技術に関する業務経験がなかったため、これらの挑戦は私たちにとって大きな試練でした。

社内のクラウドサービスの専門家たちと連携して、最新のクラウド技術を利用しながら、セキュリティを最優先に考慮したシステムの構築方法を学びました。クラウド技術の基礎から着手し、生成AIを安全に活用する方法に焦点を当てながら、システムの設計と実装に取り組みました。

また、OKIグループ全社員が自由に利用できるシステムということで、ルール作りも必要です。
AI利用ガイドライン(※1)の作成では、技術的なガイドラインだけでなく、法律やコンプライアンス、セキュリティの専門家とともに、AI技術を安全かつ責任ある方法(※2)で利用するための枠組みの整備に協力しました。

  • ※1 生成AIが出力した内容は、必ずしも真実とは限りません(ハルシネーション)。そのため、活用の際にはユーザーの責任のもと、きちんと内容を精査することを社内のルールとしました。
  • ※2 一般的にインターネット上で公開されている生成AIのサービスでは、ユーザーが入力した内容をAIモデルの学習に使われてしまうので入力する内容に気を使う必要があります。万が一社内情報を学習されてしまうと、世界中の利用者がその内容にアクセスできてしまいます。「OKI AI Chatシステム」は、AIモデルに学習されない仕組みを利用しており、かつ入力した内容はシステム上も一切保持しないという方式にしています。そのため、ユーザーは些細なことを気にせずに安全にシステムを利用することができます。(当然、「コンプライアンスの範囲内で」です!)

多くの挑戦と試行錯誤の結果、私たちは高いセキュリティ基準を満たす、適応性の高いAIチャットシステムを実現しました。生成AIの応用とクラウド開発の両方の挑戦を乗り越えた過程で、全員が大きな達成感と共に、技術的な見識を深め、成長できました。

生成AIの応用とクラウド開発

このように2024年3月現在約2000人の社員に利用されている「OKI AI Chatシステム」は、OKIの主管部門と私たちWGメンバーの熱心な取り組みにより生まれたのです。
結果的に、「イノチャ」発のWG活動はOKIグループ全体を動かすイノベーションの一端を担ったと考えられます。

2024年2月に開催されたOKIグループ技術展という社内展示会でも大好評でした。入社7年目の私は展示会へ出展は初めてでしたが、二日間で100人を超える方々が私たちのブースに立ち寄ってくださり、私の会社員人生で一番びっくりな体験をしました。

興味深かったのは、来場者によって生成AIへの見方に大きなばらつきがあったことです。AI技術に未経験の方々と、その分野で熟練した方々の間には、理解度や期待値に明らかな差が見られました。その違いを直接目の当たりにすることで、私たちのシステムがさまざまな層のニーズにどう応えるか、より深く考えるきっかけとなりました。
また、印象的だったのは、普段はなかなか会うことのないOKIの社長や会長をはじめ、役員の方々がブースを訪れてくれたことです。役員の方々からは、生成AIの活用方法に関して独自の視点や革新的なアイデアを伺うことができ、大変刺激を受けました。

この展示会を通じて、開発したシステムに関する多くの意見や感想を直接耳にすることができ、大変嬉しく思います。さらに、様々な立場の人々との対話から学んだことは、私たちの仕事に新たな視点をもたらしました。
このような経験は、今後の開発活動において大きな力となることを確信しています!

展示会

今後の展望

部門間を超えた幅広いサポートもあり「OKI AI Chatシステム」は現在、OKIグループの全社員が利用できる段階にあります。
「OKI AI Chatシステム」の開発のような生成AIに関わる業務やWGの活動を通して、今後、私がやってみたいと思っていることは以下の2点です。

●生成AIに慣れていない人向けのアプローチ
生成AIを全く使ったこと無い人でも、「プロンプト」という概念を意識することなく、優れたアウトプットを引き出せるようなUI/UXを目指していきたいです。

●AIツールとしての機能の向上・カバー範囲の拡張
本記事執筆時点ではT2T(文章を入力し、文章が返ってくる)形式しかサポートしていないため、文章以外の形式をサポートするマルチモーダルAIを直近の目標にしています。また、将来的には「AIと対話しているだけで、完成されたソースコードやドキュメントが出力できる」レベルまで目指していきたいです。

生成AIの時代が間近に迫っている今、AIを活用したさらなるイノベーションへ向けて、私自身も一歩一歩確実に進んでいけるよう、最新の技術動向を追っていきたいと思います。

SKILL

まとめ

今回ご紹介したように、当社では「イノチャ」のように社員が気軽にチャレンジして、イノベーションを起こすようなきっかけとなる機会が用意されています。
実際に、私たちが「イノチャ」をきっかけに生成AIを検証・推進するWGを立ち上げ、その活動成果から開発に参画することになったシステムは、今ではOKIグループ全体で利用されており、各所で業務改善のイノベーションを起こしています。

これを読んでいる皆さんも、自分のアイデアが組織全体の成長に大きな影響を与える過程を経験してみたいと思いませんか?

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